東海道五十三次ひとり駅伝・9 「伝わるもの。伝えるもの」
2011年 08月 16日
ほんの数キロ走れば、もう由比の宿。由比は、蒲原同様、古い町なみが見事に残されています。
定番ですが、必見の「正雪紺屋」。いまだ現役の染め物屋さんてのはスゴイ。
小さくてよく見えないでしょうけど、この風鈴は、チューハイや
コーラの空き缶に、細かく縦に切れ目を入れた物。
ゴミが、見事なアートに変身です。
由比駅から、「さった峠」に向う途中の倉沢集落。
風情十分な格子の家から、香のかおり。おだやかな気持ちになります。
お盆。迎え火(?)をたくお宅もありました。僕は、山をきりくずして造成した市営住宅で育ったこともあり、古くから伝わるお祭りや風習などを、ほとんど知らずにきました。残すべき伝統がないっていうのは、ちょっぴり寂しいものです。
富士山の絶景で有名なさった峠。でも今日はご覧の通り。
ここは(たぶん)NHKの定点カメラと同じ場所。左から、JR東海道線、国道1号バイパス、東名高速。津波が来たら、どうなるんだろう・・・。
おとといの吉原宿と違い、今日は誰にもお会いする予定はありません。でも興津宿の一里塚公園で、とても嬉しい偶然の出会いが待っていました。
水道でバシャバシャ顔や頭を洗う人の姿。一瞬ホームレスかと思いましたが、上げた顔を見たら、純朴そうな若者。そして横には、重装備の自転車!
僕も長くサイクリングに夢中になっていた身。「どこから?」と、声をかけてみました。
「広島です!」の答えにビックリ。しかも、すでに広島から東京まで走りきり、今はその帰りという話にまたビックリ。僕なら絶対、帰りは自転車を宅配で送って、ラクをする。
上村クン、高校3年。
野球部・ピッチャー。
あれえ?今、甲子園じゃあ・・・
「・・・負けちゃったんで・・」
あ、もしかして甲子園のかわりに自転車?
上村クンは、テレくさそうな笑みを浮かべつつ
「・・・・・でも、勢い・・だったかも・・」
ははは。
箱根はキツかった?
「キツかったです。でも、温泉に入れてもらいました!」
いいとこあるじゃないか、箱根宿!
自転車は、お父さんの愛車とのこと。
「若いころ、自転車で日本一周したって言ってました。あと、外国も走ったって」
伝わってますね!DNAが、しっかりと!!
最近の高校生っていうと、コンビニの前でウ〇コ座りしてる姿を思い浮かべてしまいますが、まだ絶滅してなかったんですね、こんな純朴だけど快活な笑顔と、素直な言葉づかいの高校生が!
オジサンは嬉しくなってしまいました。
あッ、そうだ!
急に思いついて、別れ際、少々ラーメン代をプレゼント。ケチな僕には極めて珍しいこと。彼の笑顔や素直な態度が素晴らしかったからなのはもちろんですが、おととい僕が吉原宿で受けたご恩を、何かでお返ししたいと思っていたこともあります。吉原宿の人情が、僕を介して、広島の若い旅人に。
吉原宿の方々も、以前きっとどこかの旅の空で、親切にされた経験がおありなのでは? ずっとさかのぼっていけば、おなじみの(?)龍馬。龍馬が道中「旅は道づれ」と受けた恩が、巡り巡って平成23年、広島の高校3年生に・・・他愛ない空想ですが、なんかワクワクしてきます。
「ありがとうございます!」
「じゃ気をつけて」
慣れない行為のコッ恥ずかしさと、中年の見栄で、ついオーバーペースで走り出し、いきなりヘロヘロになってしまいました。
清見寺。
数多くの歴史上の著名人が訪れた名刹。とくに家康とは縁が深いとか。
ずっと貫禄充分な姿が気になっていて、一度は来たいと思っていました。
江尻宿。ここには、ぜひお会いしたい女性がいました。クラリネット奏者の、水本みゆき さん。
もう10年も前になるのかな、障害をもちながらハモニカ慰問を続ける池尻晃クンのバック演奏を、よく一緒に手伝いました。彼のことが全国放送(NTV)のドキュメンタリーになる時は、毎週のように会っていましたが、ここしばらくご無沙汰。
久しぶりに電話したところ、ちょうど「東日本大震災のチャリティー・コンサート」とのことで断念。彼女も長い間、ボランティア活動を続けているのです。彼女の美しいクラリネットを思い浮かべながら、江尻を通過。
左が水本さん。中は生徒さん。
右が、永遠の少年・あきらクン。
府中まであと少しの、小さな神社。一服してたら、垣根の向こうを、自転車の上村クンが走り去って行きました。若者らしい快活なオーラを全身から放ち、力強くペダルを回しています。僕にはまったく気づきません。小さくなる彼の背中に、心の底から旅の無事を祈りました――。
府中、今の静岡駅には昼少し前に到着。僕も明日はライブ。史跡めぐりは次にして、すぐに電車に飛び乗りました。
・・・・・・・・・・・・・・・
夜10時。地デジ難民の僕は、無音の部屋でいつものチューハイ。
・・・・自転車の上村クン、無事に今日の目的地へ着けただろうか・・。
・・・・自転車は故障しなかっただろうか・・・。
・・・・ちゃんと夕飯は食べただろうか・・・。
・・・・野宿に良い場所は見つかっただろうか・・・。
気になって仕方ありません。
いやいや、心配は無用ですね。彼は広島から東京まで走って、さらにその帰り道。すでに、たくましい旅の達人です。今ごろ寝袋の中で、のんびり静岡県の星空を眺めているに違いありません。
本日の走行距離/約27㎞
✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩
新設の
『東海道五十三次ひとり駅伝・膝栗毛』
専用ブログへは、こちらからどうぞ!
↓↓↓↓↓
東海道五十三次ひとり駅伝
おまけ写真つき!
✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩