謹呈感謝。君山宇多子「時の使者」
2010年 12月 16日
「謹呈」の文字が、なんとも嬉しいものですね。
君山さんは、大岡博(詩人・大岡信の父)の系譜、「濤声」の同人。15・6年前に知り合いました。
もっとも、その時は歌人としてではなく、「語りべ」として。
たった一人で舞台に立ち、物語る。ただそれだけ。それだけで、見事に観客を異次元へと誘ってくれます。究極の芸といえるかもしれません。
僕は、短歌の素養はまったくありません。けれどこの歌集を読み進めていくと、君山さんが日常の一瞬一瞬をとても大切にして生活されていることが伝わってきます。
見逃してしまいがちな何気ない情景。それを感性鋭く切り取ることで、今度は読み手の心に、別の波紋のようなものが広がっていく気がします。
もともとは現代詩を、創作されていたとのこと。短歌に「転向」されたのは、五・七・五・七・七の「抑制」に魅了されたからだそうです。たしかに、省略されているからこそ、無限に広がる世界があるのかもしれません。
ふだん口数が多く、ブログでもやたら文字数の多い僕は、ひたすら(ハゲ)頭を掻くばかりです。
シロウトながら、とくに印象深かった作品をいくつかご紹介します。横書き、ゴメンナサイ。
速報が電光板を通り過ぎ日ぐれを歩む寡黙なる群
時間かけ証明問題解き終へてプライド高き少年となる
雪深き土地が人柄つくるといふ辛抱づよきを時に寂しむ
* 歌集「時の使者」についてのお問い合わせは、
短歌新聞社(TEL 03-3312-9185)まで